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Failure is another stepping stone to greatness.


亀井です。

今私が参加しているプロジェクトで、一日一回、みんなで名言を味わうという謎の儀式があるのですが、名言というものは大体本質は同じ事を違う言葉で言い換えているんだなと感じることが多く、面白く参加しています。

タイトルの「Failure is another stepping stone to greatness.」は適当な名言をひろって来ただけで、お題になったものではないのですが、失敗にまつわる名言は共感させられます。成功よりも失敗に学ぶことが多いのが人間というものです。

「この人、仕事が出来るな~」という Aさんに若いころの話を聞いてみたのですが、「20代のころに色々苦労した。自分の体験だけじゃなく、周りでトラブってるとそれもよい勉強になった。」なんて事をいってました。

私は結構歴史好きなのですが、好きな偉人ベスト10、ドイツの鉄血宰相、オットー・フォン・ビスマルクが、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と言っています。A さんは経験と歴史(周りで起きてるトラブル)の両方に学んで賢者になったんだなと思いました。大袈裟ですが。

さて、歴史というのは勝者によって作られるものですし、偉人の成したことや「成功法則」のようなものは歴史に残りやすいものですが、失敗はあまり歴史に残らないように思います。勝者がいれば敗者もいるわけですので、歴史を見る際にも敗者がなぜ敗者となったのかを見れば良い、という事になりそうですが、えてして勝者が書いた敗者というのは単純化されすぎるきらいがあります。

英仏100年戦争の前半、フランスは「鎧を着た豚」ゲクランがフランスの劣勢を挽回するまでいたずらにイギリスのロングボウ兵を活用したダブリン戦術の前に突撃を繰り返し、国土を失っていったという事になりますが、「そんな単純?」という気がします。

「敗者」が書いた克明な文章が、システム開発の世界にもいくつかあります。(やっと本題です)

・人月の神話

有名な本ですね。

IBMの大型コンピュータSystem/630、およびオペレーティングシステムOS/360の開発チームを率いた著者が、プロジェクトで発生した問題点を詳細に分析し、ソフトウェア開発にまつわる困難と展望について持論を展開したエッセイ集。

という事なのですが、学生時代に読んだこの本は私のシステム開発観にわりと影響を与えました。「遅れているソフトウェアプロジェクトへの要員追加は、さらにプロジェクトを遅らせるだけだ」というブルックスの法則。「人員×月日」というスケジュール見積もりが「神話」に過ぎない、というのがこの本の主題なのだと思うのですが、多年にわたる開発の様子が克明に記録されており、本題では無い部分も十分楽しめます。特に記憶に残っているのが、

ほとんどのヨーロッパの大聖堂は、いろいろな時代にわたってさまざまな建築家によって立てつづけられてきている。各建築家が建てた部分間で、構想や建築様式の相違がみられる。後代の検知羽化は、様式の変更や好みの違いを反映させるため、それ以前の設計を「改良」したいと思うものだ。(中略)その結果、神への賛美と同じくらいに建築家の奢りを物語ることになる。

これに反し、ランス大聖堂の統合された建築様式は見事な対照を見せている。見るものは、ここの美しさ同様にそのデザインの見事な調和に心を動かされる。(中略)この完全さは8世代にわたる建築家の自己犠牲に依っていられたものであり、全体が統一されたデザインになるよう、彼らはそれぞれ自分のアイデアを犠牲にした。その結果、そこには神への賛美のみならず、堕落した人間をおごりから救出する神の力が示されることになった。

この一節です。チーム開発では「一人の人が書いたと見えるようにソースを書く、拡張する」と私は常々言っているのですが、この辺の話に影響を受けています。

・プログラマーのジレンマ 夢と現実の狭間

この本も面白いです。

シリコンバレーを舞台に天才プログラマーのドリームチームが挑んだオープンソースプロジェクト「チャンドラー」

陣頭指揮をとったのは、ロータス1-2-3を開発した元ロータスデベロップメント設立者、ミッチェル・ケイパー。ケイパーが夢を託した「チャンドラー」は、カレンダー、メール、メモ書きといったソフトウエアの垣根を越えて、自由に身の回りの情報を管理できる新しいPIM(情報共有ソフト)。

ケイパーは、オープンソースアプリケーション財団(OSAF)を創設し、伝説のプログラマーたちが集まってくる。元初期マックOS開発者、アンディ・ハーツフェルド、元ゲーム「ローグ」開発者、ネットスケープ創業時メンバー、マイケル・トーイ、元アップルでマックBASICを開発した、ドン・デンマン、元初期マック用ワープロ開発者、ジョン・アンダーソン、ネットスケープ創業時メンバー、ルー・モントゥリ、――錚々たるメンバーが、夢のPIMプロジェクトにのめりこんでいく・・・・・・しかし、立ち塞がる難題、時間の壁、去り行く同志、なぜかプロジェクトは迷路にはまっていく。

ソフトウエア開発はなぜ遅れるのか。同じ過ちを繰り返しながら、なぜ今度だけは違う、自分だけは違うと信じてしまうのか。ソフトウエアとはそれほど難しいものなのか。その謎を解こうと、著者は、歴史をひもとき、混迷する3年間をつぶさに追っていく。米国で多くのプログラマーの共感をよんだ話題の長編ノンフィクション!

どれも長編ですが、丁寧に書かれており、読みごたえがあります。Let’s 失敗に学ぶ。